先生の青



死のうとここに来たんだ
寝てる私を残して



「……オレだけ生きてちゃ
ダメなんだ

イチに優しくされちゃ
ダメなんだよ…………」




「………バカじゃないの……」



腕を振り上げ
手を握りしめて
先生の胸を叩いた




「……バカじゃないの……
先生、バカじゃないの……


死んで楽になるの
先生だけでしょう
そうやって全部投げ出して
逃げて楽になるなんて……


フミさんのためじゃないよ
先生は自分のために
ただ逃げたいだけじゃない!」



ドンッ…………
ドンッ…………


先生の胸を何度も叩いた



「楽になんかさせない…………
私は先生を楽になんかさせない


先生がそうやって
何もかも投げ出して
楽になろうとする度に
私はそばにいて捕まえる


フミさんのいないこの世が
どんなに先生にとって苦痛でも
私は絶対に許さないよ……


先生が楽になること
逃げ出すこと
絶対に許さないから……」



「…………イチ………」



「どんなに苦しくても
そばにいる……………
絶対に離さないから……


楽になったらダメだよ
逃げちゃダメなんだよ……」




答えなんか どこにもない
誰も助けてなんかくれない




哀しみは消えない
苦しみも消えない


後悔は一生抱えて生きるんだ


先生が楽になることは許さない


その代わり
ずっと そばにいよう


私がいることで
余計に苦しいこともある



それでも絶対に
目を逸らさないから



哀しむ先生からも
苦しむ先生からも
目を逸らさないから………





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