先生の青
身を切るような
風に吹かれて
二人で泣いた
手を握ることも
抱き合うことも
しなかった
砂の上で
お互いに触れることなく
ただ泣いた
耳鳴りのように
波の音が響いてる
もうこれ以上ないってくらいの
暗闇の底にいると思った
出口のない
終わりのない
哀しみと後悔の暗闇
それでも私は安心してた
先生と同じ場所にいる
全く同じ暗闇の底にいる
こんなドン底でも
二人一緒にいられるなら
何も怖くなかった
何も怖くないよ、先生
どんなに哀しくても
どんなに苦しくても
先生がいない世界に比べたら
哀しみも苦しみも
私にとっては幸せだよ
ひとしきり泣いて
両手で涙を拭い
隣にいる先生に声をかける
「………一緒に帰ろう」
先生もゴシッ……と目をこすり
立ち上がって
私に手を差し伸べた
指先はかじかんで
感覚なんてなかったけど
先生の手を強く握り
歩きにくい砂浜を
並んで歩いた
波の音に顔を向けると
海はとても青く
………先生の青だ………
先生の心の青が
私の目の前に広がっていた