先生の青




「………あま――い」



一口食べると
すごい甘ったるい



口に広がる甘さは



「………先生……
ハチミツ大量にまぜた?」


非難するような口調になった
だって尋常じゃない甘さだもん



「うん」



そんな私の胸の内に気付かず
先生は少し得意げな表情で
うなずいた



「リンゴって言ったら
ハチミツだろう?
のどにも良いはずだ」



リンゴとハチミツって
カレーじゃないの?


すりおろしリンゴに
ハチミツ大量投入する人なんて先生ぐらいだよ……



「イチ、ハチミツ嫌いか?」



ハッ
先生がしょんぼりしてきた
ダメよ、イチ
良かれと思ってした
先生の善意じゃない



「は……ハチミツ大好き……」



パクパク
甘ったるいすりおろしリンゴを口に運ぶと


大量のハチミツが
逆にのどに刺激的
むせそうになったけど
堪えて完食した




「……ご、ごちそうさま……
なんか熱下がったかも
……ありがとうね………」



何とか自然な笑顔を
先生に向ける



私の手から受け取った空の器をひざに乗せ先生はじっと見つめた



「………イチ」



「ん?」



空の器から すっと視線を上げ
先生は私を真っ直ぐ見つめた




「………先生?」



「イチ。
オレはイチを幸せに出来ない」





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