先生の青










「―――――――――……」






気がつくと
見慣れない天井と
カーテンレールや
銀色のフックみたいなのが
目に映る



フックには
点滴のパックが提がってた





「………気がついた?」




その声に横を向くと
カナさんが疲れたように
うっすら笑顔を浮かべた




「………………」



口を開いても
何も言葉が出なくて
そんな私の手を
カナさんは握り




「市花さん
赤ちゃんいるんだ」


「………なんで、そのこと…」



「あなたが自分で言ったのよ?
鎮静剤を注射しようとした
看護師さんに


『お腹に子供がいます。
薬は止めてください』って」




カナさんの言ってることは
全く理解できなかった




なんで私
病院のベッドに寝てるんだろう



鎮静剤って何の話だろう?




ただ天井のフックから提がる
点滴の管を目で追うと
布団の上に置かれた
自分の腕に繋がってる




「しばらく
安静にした方がいいって

あ、お腹の赤ちゃんは
大丈夫だからね?
安心してね」




………お腹の赤ちゃん……



ぼんやりした意識の中で
手は自然と布団の上から
お腹を優しく撫でてた






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