先生の青
カナさんは
お腹を撫でる私を
何とも言えない表情で見てた
「……………泉は……
知らなかったんだよね?
だって私、昨日会ったけど
泉から何も聞いてないし」
カナさんの言葉は
耳に入っても
すぐ通り抜けていった
………先生
先生はどこにいるんだろう?
そうだ
先生を探しに行かなきゃ
会いたかった
ずっと会いたかったし
先生も私に会いたいはずだし
ベッドから起き上がった私を
カナさんは慌てて止めた
「市花さん?ダメだよ
安静にしてなきゃ……」
「先生のところに行くんです。
待ってるはずだから
会ったらきっとびっくりする…
『本当にイチ?』なんて言って
きつく抱きしめてくれる
『会いたかったよ、イチ』って」
カナさんの制止に抵抗しながら
下にあるローファーに
足を入れた
「先生、どこにいるのかな…」
数歩 進むと
クイッて何かに引っ張られる
振り返ると点滴の管が
ピーンと伸びてた
「市花さん、ベッドに戻って」
「……邪魔だなぁ、これ」
腕のテープをはがそうとする
私の手をカナさんが掴む
「ダメよ、ほら戻って」
「邪魔だなぁ………
早く先生を探さなきゃ……」
ベッドに戻るようにと言う
カナさんの顔は
哀しみに歪んでた