先生の青



「先生、先生を探す………
先生を探しに行く………」




点滴を
腕から引き抜こうとした私に
カナさんは叫んだ




「いい加減にしなさい!
あなた、お母さんでしょう?」





   お母さんでしょう?





カナさんの言葉が
頭に響いた





今にも泣き出しそうな顔で
カナさんは私をにらんで言った





「あなた
もうお母さんなんだよ?


今は大丈夫でも
安静にしてないと
お腹の子に悪いよ………


泉だって頑張ってるし
あなたが そんなんじゃ……」




泉だって頑張ってるし



その言葉が一気に
私を絶望へ引き戻した




ベッドに横たわる
傷だらけの先生が………





「………嫌……違う……
違う、違う、先生、違うよ
嘘だもん、違う、嘘だ……」




違う、あれは紛れもなく真実だ
先生は事故に遭って
意識不明の重体だ………




「嫌………ダメだよ……
先生、先生のところに行く」



腕から点滴を
勢いよく引き抜いた


「市花さん!」


もう何にも繋がってない管を
床に投げ捨てた私を
カナさんは泣きながら
引き止めた






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