先生の青





カナさんは
遠くを見るような目をして




「私の背中を追いかけて
泣きべそかいてた泉が
なんか遠くなったような
寂しい気持ちになったけど


あの子が私にとって
大切な弟だったってこと
逆に鮮明に思い出した


いつだって
私と泉とフミ3人だった


フミが自殺してからは
3人にも2人にもなれなかった


だけど、泉がそう言ってから
また3人に戻れる気がした


フミはもういなくて
実際には無理だけど
ちゃんと思い出せる


3人で波打ち際
日暮れまではしゃいだ
あの頃の気持ち………」




言葉が途切れて
カナさんを見上げると
涙をたくさん浮かべて
あごを震わせ唇を噛み締めてた




「大切なあなたを置いて
泉が行くわけない………
そんなのフミが許すわけない」




涙がまざったその声を
目を閉じて聞いた




静かな部屋には
切実な祈りが満ちている






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