先生の青



集中治療室には
絶え間なく
医療機器の音がしてる



これは全て
命をつなぎ止める音だろうか




眠っている。
にしては痛々しい姿の
先生に話しかける




「先生、私ね
正直 自分が不幸な少女だなって
可哀想だなって
思うことがあるんだ


親とかさ
無条件で自分に優しいはずの
家族は優しくないし


初めての男もご存知の通りだし


先生も途中
サイアクだったよねぇ?


だけどさ、今ならわかるよ
ちゃんと、わかる


つらい事にも哀しい事にも
ちゃんと意味があった……


だって恵まれて幸せだったら
私は先生に
手を伸ばさなかった
先生も私に
手を差し出さなかった


つらい事や哀しい事の度
私たちはお互いを求めあった


弱さや依存でも
私たちには必要だったよね?
恋や愛と違っても
私たちにはかけがえのない
大切なことだったよね?


今までのつらい事が孤独が
先生と結ばれるための
対価だったとしたら
安いもんだよ…………


お腹の赤ちゃんも
今じゃなきゃダメだったんだ


この子はきっと
先生と私に『生きろ』って
伝えに来たんだよ


自分が生まれるから
先生と私に生きろって
お腹の中で叫んでるよ


母親の私が
めちゃくちゃな状態でも
全然ヘーキなんだもん
この子すごく強いよ


絶対に先生と私を助けてくれる
この子を必死で守れば
幸せ、作れるよね?


ねぇ、先生………
絶対にそうだよね………」






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