先生の青
私は あるよ、英雄さん。
私には あった。
付き合う前、付き合う始め
確かに英雄さん
あなたが 私の世界の全てだった
私の未来 全て
英雄さんで埋まっていく
そう……思ってた
「………市花?」
絆が心配そうに
私の顔をのぞき込む
「市花?大丈夫?」
絆の その声で
美術部の皆も
私の顔を怪訝な表情で見た
「……なんで?大丈夫だよ」
「…でも、市花…泣いてるよ」
「泣いてる?
泣いてなんか……」
笑って頬に指先をあてると
頬は濡れていた
「大丈夫?どうしたの?」
差し出された
絆のハンカチを受け取らず
「……目に…ゴミ入った
ごめ……トイレ行ってくる」
「………あ、市花……」
早足で美術室を出て
………わかってる
………間違ってるって
………わかってる
………私だって終わらせたい
勝手に溢れる涙で
進む廊下が グニャリと歪む
苦しくて 苦しくて
トイレまで走った