先生の青




バタンッ


誰もいない女子トイレ
一番奥の個室に入る



  ジャ―――――――ッ



水の流れる音で
漏れる嗚咽を隠して


「…………うっ…………」




恋をしてた


他の人と変わらない


恋をしてた


ただ好きだった


一緒にいると嬉しかった



「………うっ…ううう……」



普通の恋をしてただけなのに



何がいけなかったの?


私、何を間違えたの?



………誰か教えてよ………



「うう―――――っっ……」



ドアに背をつけたまま
崩れるように しゃがみ込む



痛くて 痛くて 苦しくて



涙は いつまでも止まらない







     「イチ!」




………………え?



「イチ!ここか?」


ダンダンッ
背中にドアを叩く振動がきて


バッと振り返り 後退ると
トイレにひざが ぶつかった




「……イチ!大丈夫かっ?」



「………三島先生?」



ズッ………鼻をすすり
手の甲で涙を拭う



「おい、お前っ!
やっぱり悩み事あるんだろっ!
水くさいぞっ!
先生に言えっ!」



「……先生…ここ女子トイレ」


「ああっ?うるせーなっ!
イチが泣いてんのに
女子も男子も構ってられねぇ」



……んな、めちゃくちゃな




< 53 / 389 >

この作品をシェア

pagetop