先生の青
「イチ!イチ!」
「……うるさいなぁ」
カチャ………
鍵を開けて ドアをひらく
「イチ!大丈夫か?
いや、大丈夫だ!
安心して、オレに話せ?」
そんな傷だらけの顔で
大丈夫だ!なんて言われても
「目にゴミが入っただけ
悩み事なんてないよ」
まだ全然うるむ目で
先生を見つめる
「…………お前も強情だなぁ」
先生は呆れたように
ため息ついて
「泣く前に誰かに相談しないと
1人で何もかも
解決なんて出来ないぞ」
「わかってるよ………」
だけど、がんばらなきゃ
英雄さんが私に
あんな事をするのは
私に隙があるからだ……
強くなりたい
1人でも大丈夫って
自信が欲しい
「先生、本当に大丈夫だから」
「でも、イチ……」
「ほら、早く出なきゃ
誰か来たら大変」
先生の背中を両手で押し
出口へ歩き出す
私に押されながら
先生は顔だけ振り返り
「これくらいの事ビビって
教師やってられるか」
全く、この人は………
「先生と女子トイレにいる所
誰にも見られたくないの
私がっ!」
強い口調で言うと
先生はすねた顔して
「小さな事を気にしてたら
生きて行けねぇよ、イチ」
先生と言い合いながら
美術室へ帰った。
頬を濡らした涙はすっかり渇き
英雄さんと ちゃんと話し合おう
絶対に負けないように
今度こそ 終わらせる
そう決意した。
自分の非力を知らずに