先生の青




「ほらほら、遅くなったら
帰り道 危ないぞ」



三島先生に言われ
仕方なく美術室を出た




生徒玄関を出て
空を見上げると
グレーの雲が夜空を流れ
三日月を隠した



もうすぐ梅雨の時期に入る




夜空を見上げる私の耳に


ザッ、ザッ、ザッ………
足音が聞こえて
そちらの方を向くと



「イチー、でかい口開けて
空に、なんか あったか?」



三島先生が夜空を見上げながら
こちらに歩いてきた



「職員の通用門は
こっちじゃないよね」


つい 素っ気なく言うと


「イチがちゃんと帰るか
心配だからな」



三島先生は
小さな子供に
笑いかけるように
私の顔をのぞき込む


照れくさくなって


「か、帰るもん……」


プイッて
そっぽ向いてから
校門へ向かい歩き出した



「オレも電車だから
途中まで一緒に帰ろう…」



「ウザいなぁ~」


可愛くないこと言って
すたすた歩く



本当はすごく安心する


本当は帰りたくない


少しでも三島先生に
一緒にいて欲しい………



英雄さんの事どうしよう



先生と並んで歩き
校門を一歩出た時
目に入った
路駐してる黒い車




ピタッ
足を止め立ち尽くす私を
怪訝な表情で先生は見つめた



「イチ?どうした?」



目の前の道路に止められた
黒いクラウン



――――――英雄さんだ





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