先生の青




大学病院で教授をしてる


お母さんとは仲良くしてる


自分を父親だと思って
甘えてくれ



来年の春、家族になろう



父は そんなことを
言った気がする



私はナイフとフォークの
使い方に悪戦苦闘してたから
正直よく覚えていない




――――――だけど



「市花ちゃん」


父の隣にいた人


少し長めの髪を
カッコよく毛先を遊ばせて
賢そうな切れ長の目を
私に向けた




「市花ちゃんは高1?
じゃあ3つ下だね。
可愛い妹が欲しかったんだ

市花ちゃん
仲良くしようね――――――」




父も兄も


私とは何もかも違う


ノートがなくなった。
消しゴムが買いたい。
ジャージに穴が開いた。
靴がもうキツイ。



それを母に伝えるのに
申し訳ない気がして
3日もかかったことがある




不安だった
世界があまりにも違い過ぎる



だけど同じくらい眩しくて




隣の母の笑顔が穏やかで



同じ席についてるのに


私だけが切り離されてる
気持ちになった




レストランから出て


私はお手洗いに寄った


戻ると父と母はいない


いたのは 英雄さん 兄だ。





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