先生の青
「父さんたち、下のロビーで待ってるって」
お手洗いから戻った
私にそう告げ
二人でエレベーターに乗った
「明日はヒマ?」
エレベーターの後ろはガラス
暗闇に街の灯りが輝いてた
地上に降りて行く箱の中
英雄さんは私に訊いた。
「一緒に遊ぼうよ」
「でも」
いきなりの展開に
私はためらう。
この人と私は兄妹になる。
仲良くするため
気を遣って誘ってるのかな?
考え込む私の耳に
英雄さんは そっと唇を寄せた
「…市花ちゃんは彼氏いる?」
ギュッと胸が痛くなった
英雄さんの吐息と一緒に
唇が耳に触れた。
顔を赤くした私を見て
「あれ?もしかして
付き合ったことない?」
クスクス笑って
「明日、5時に駅の改札」
英雄さんが一方的に言うと
一階に着き
エレベーターの扉が開いた
その日の夜は眠れなかった。
耳に唇の感触が消えなくて
身体中が熱かった――――――
英雄さんと
付き合うようになるまで
そう時間はかからなかった