先生の青



頭の中が「?」で
いっぱいになる



「泊まるなら家に連絡しろよ
ああ、あと晩飯
何か弁当でも買ってくるか」



「あ、それなら私 作るよ
すっかりお世話になったし」


先生は目を見開き


「作る?……作った料理?
て……手料理?」


「う、うん」


「まぢでっ?
すげー嬉しいっ!」


ああ久しぶりに
カップ麺やレトルト、
冷凍食品 以外の物が食えるー


って大げさに
喜ぶところを見たら


彼女いない歴 長い?


そんな風に思えた










夕方、スーパーで食材を買い
晩御飯を作った



キッチンに立つ私を
とても物珍しそうに見る
先生の視線が
背中に痛いくらいで


胸がざわざわした



テーブルにおかずを並べると



「なにこれっ!
めちゃくちゃ和食だっ!」


先生は野菜不足だろうと


蓮根のきんぴら
ほうれん草のゴマ和え
きゅうりの酢の物
筑前煮(冷凍野菜だけどね)
豆腐の味噌汁を作った


だけど男の人って
やっぱり肉が良かったかな?



「……先生、嫌いな物
だったりする?」



「いやっ!すげーよ
おふくろみたいだなイチ」



……生徒におふくろみたいって
褒めてんの?
けなしてんの?



「早く食お?」



子供みたいに笑うその顔は
褒めてくれたんだな


一口、一口 食べるたび
「めちゃくちゃうめぇ」
なんて 喜んでくれるから



誰かのために作るって
幸せな気持ちになるんだ


ごちそうさまの後


先生はありがとうって
言ったけど


喜んでくれて
こちらこそ
ありがとうって思った




< 96 / 389 >

この作品をシェア

pagetop