先生の青




暗闇に
チッ、チッ、チッ、チッ……
時計の秒針の音

時折、冷蔵庫の唸るような音




明日になれば

ここから出て

また頑張らないと



「…………先生、もう寝た?」


少し間があいて


「…………いや」


かすれた先生の声


「今日は本当にありがとう」


ちゃんとお礼を言ってなかったのを思い出したから



「いいんだよ
教師が生徒を守るのは
当たり前だし」



……当たり前か


「でも、こうやって
女子生徒を泊めるのは
ヤバいんじゃないの?」



……ギシッ
ベッドが軋んで
先生がこちらを向いた


私も ゆっくり先生の方を向く


暗闇で
先生の目が
綺麗に光って見えた



「一時的な避難のためだし
オレは女に手を出さないし」


……「生徒に」じゃなく
「女に」なんだ



「んな ちっちぇ事
気にしてたら
生きていけねぇよ、イチ」



先生と生徒が
1つのベッドに入る事
ちっちぇ事じゃないだろ


突っ込み入れたくなるけど


この人の常識は少しずれてる


私を助ける事も
私を泊める事も
私を慰める事も


三島先生にとって
正しい事で
当たり前の事なんだろう



誰かに非難されても
絶対 曲げないんだろうな



「さ、もう寝なさい」


温かい先生の手が
私の頬に触れ
親指で優しく撫でてくれる



先生の手は私に何も求めない


ただ ひたすら
私に安心だけを与えてくれる



……気持ちいいなぁ


私が眠りに落ちるまで
先生は優しく頬を
撫でてくれていた





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