アンチバリアフリー
「大丈夫?」

おれは一瞬妙な違和感をおぼえ、居心地の悪さにまたもや壁にもたれかかることになった。
視界の隅でチラっと声のした方を確認すると、男子トイレの入口には男子トイレにはいるはずのない同じ二年の恵が立っていた。
まるで自分の両親が今にも死んでしまうとでもいうようなほど不安そうな顔で、おれの顔を覗き込みながら背中をさすっている。
ほんの少し感じた下心のような気持ちはそれ自体とても心地よいものだったが、それでも頭の中にある社会のモラルに従ってまっすぐ延びている線をそらすには少し小さすぎたようだった。

「大丈夫、、、だよね?」

いくらたっても席に戻ってこないおれのことをよほど心配していてくれたらしく、恵の声は少し震えていた。
ちっ、遠藤のやつ変な気をつかいやがって、まぁそれでもこうやって心配してくれている恵には何の罪もない。
むしろ心配してくれていた恵をいとおしいとさえ思っている自分に少し驚かされた。
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