アンチバリアフリー
ただの幼なじみだった二人の関係が次のステップに移ったのは高校に入って初めての夏だった。
そしてそれはおれが全てを失った夏でもあった。

その日も、部活が終わっていつものように何をするでもなくコンビニでたむろして、いつものようにくだらない下ネタで小1時間ほど盛り上がって、いつものようにその当時付き合っていた先輩マネージャーと二人並んで自転車をひいて帰りながら、これが大人になったらいつか”あの時はよかったなぁ”と若かりし頃を振り返って懐かしがるあの有名な青春なんだと感じながら、そしていつものように自分の家のドアを開けた。
そしていつもと変わらない冷たい鉄のドアの向こうには、いつもと変わらない、決して裕福ではないが世間一般では幸福という部類に属していたはずの家庭とか家族とかだんらんみたいなものが待っているはずだった。
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