戦国ライフ-もうひとつの空-
◆再会と記憶の欠片
女将)「お恋ちゃん。悪いんだけど、このうどんを松じいに持ってってくんないかえ?」
「はい。わかりました。」
私は"杵屋"という、うどん屋で働いていた。
メインは勿論こしのきいたうどんだけど、甘味も出していて、ちょっとした息抜きに来るお客さんも多く、人気がある店だ。
女将さんからうどんを受け取ると、声を掛けてくるお客さんに笑顔で返しながら、急ぎ足で松じいの家に向かった。
松じいはウチの店とは長い付き合いらしく……
つまりは先代からの常連さまだ。
そんな松じいも結構なお年。最近腰を痛め、寝たきりでいるようで、こうしてたまに届けに行くんだ。
狭い路地裏を通り、松じいの家に着くと、トントンと合図をし、引き戸を叩いた。
「杵屋です。うどんを届けに来ました。」
そう大きな声をかけると、奥さまが笑顔で出迎えてくれて、
私はお茶を頂き、松じいと談笑した後(ノチ)、松じいの家を跡にした。
いつものように路地裏を帰っていると、お隣のおばさんが息を切らし走って来た。
おばさんは「いたいた!」と私を見つけるやいなや、着物の裾を掴み小走りで近く。
女)「た、大変なんだよ!女将さんが…!」
「女将さんが!?」