LUTIM
ワーキャット族が治めていた国・ルルティアは、半年程前にその歴史に幕を閉じた。元々友好国であった魔法国家のザーディアに吸収される形だったとカリムは記憶している。
ワーキャット族はもう何十年も前から種の血統が薄れ始めていて、純血種同士の間での出生率が著しく低下していた。
それは王族とて例外ではなく純血種の跡取りが望めない状況になり、何よりも血の濃さを重んじるワーキャットの王族は、ただのワーキャットとして生きる事を選びザーディアにその全てを譲り渡したのだ。
「はい。ザーディアに全てを譲渡した後に、一部の民は住み慣れた土地に残ったものの大多数は散り散りに旅の空に…と聞き及んでおります。」
「元来ワーキャットは徒党を組まずに生きるもの…元始の形に戻るのだ、と以前から申しておったな…」
「…はい」
ルルティアとは友好国として同盟の契りこそ結んではいなかったが、交流はあった。ワーキャット王族の決意は既に随分前からあったのだろう、それを思い出すように父王の目が細められるのをカリムはじっと見つめていた。
「して、その赤子はどうする」
いよいよ話が話題の中心に及び、思わずカリムは赤ん坊を抱く手の力を強めた。ふくふくと眠る顔はそれでも穏やかで、眺めていると何だか幸せな気持ちになるから不思議だ。
「彼ら種族は今や旅の空…旅の道中では育てきれないと判断し置いていかれてしまったのでしょう。生みの元を辿るのは不可能です」
「そうか…ワーキャット族とはいえ、子育てには塒が必要になるからな」
「はい。しかし…赤子の様子から見て身ごもったのは国の解体前…全てを責められはしませんな…」
ワーキャット族はもう何十年も前から種の血統が薄れ始めていて、純血種同士の間での出生率が著しく低下していた。
それは王族とて例外ではなく純血種の跡取りが望めない状況になり、何よりも血の濃さを重んじるワーキャットの王族は、ただのワーキャットとして生きる事を選びザーディアにその全てを譲り渡したのだ。
「はい。ザーディアに全てを譲渡した後に、一部の民は住み慣れた土地に残ったものの大多数は散り散りに旅の空に…と聞き及んでおります。」
「元来ワーキャットは徒党を組まずに生きるもの…元始の形に戻るのだ、と以前から申しておったな…」
「…はい」
ルルティアとは友好国として同盟の契りこそ結んではいなかったが、交流はあった。ワーキャット王族の決意は既に随分前からあったのだろう、それを思い出すように父王の目が細められるのをカリムはじっと見つめていた。
「して、その赤子はどうする」
いよいよ話が話題の中心に及び、思わずカリムは赤ん坊を抱く手の力を強めた。ふくふくと眠る顔はそれでも穏やかで、眺めていると何だか幸せな気持ちになるから不思議だ。
「彼ら種族は今や旅の空…旅の道中では育てきれないと判断し置いていかれてしまったのでしょう。生みの元を辿るのは不可能です」
「そうか…ワーキャット族とはいえ、子育てには塒が必要になるからな」
「はい。しかし…赤子の様子から見て身ごもったのは国の解体前…全てを責められはしませんな…」