LUTIM
恐らくは、懐胎が分かった頃にはもうすでに国がザーディアに譲渡される事が決まっていた筈だ。それを思えば胸も痛む。
しかしカリムの心の内はそれ以上に事の流れへと集中し、緊張が早鐘のようにそこを打ち鳴らしていた。父王とバーディニアの話す言葉の流れが向かう先が、嫌な予感を起こさせる。
「城下に、ワーキャット族の血の流れを保つ者は」
「現在は居りません」
「そうか…では、養い先を探す他はない、か」
「ザーディア王は、望まれぬ限りワーキャット族の生活に一切の介入はしないとご公言なさっておいでですが…」
カリムの額からじわりと汗が滲み出した。この温かな重みは確実に自分の手の内から居なくなる。
そう思うと無性に、胸がざわついた。それを誤魔化すように下げた視線の先で、自分を見上げている澄んだ碧の瞳とかち合い思わず肩が跳ねる。
いつの間に目覚めたのか不思議そうに見上げてくる視線に縫い止められたようにカリムは目を離せず、何気なく伸ばした右手の人差し指でそっとそのふっくらとした頬に触れた。
すると小さくやわらかな手がその指を掴んで
「……ぁー…」
花が咲くように赤ん坊は笑った。
それを見た瞬間カリムの体の内を何か熱い衝動のようなものが駆け抜けて、次の瞬間にはもう言葉が口をついていた。
「この子は、私が育てます!」
その声は広い謁見の間の中では思いの外響き、父王とバーディニアの視線が弾かれたようにカリムを捉えた。
しかしカリムの心の内はそれ以上に事の流れへと集中し、緊張が早鐘のようにそこを打ち鳴らしていた。父王とバーディニアの話す言葉の流れが向かう先が、嫌な予感を起こさせる。
「城下に、ワーキャット族の血の流れを保つ者は」
「現在は居りません」
「そうか…では、養い先を探す他はない、か」
「ザーディア王は、望まれぬ限りワーキャット族の生活に一切の介入はしないとご公言なさっておいでですが…」
カリムの額からじわりと汗が滲み出した。この温かな重みは確実に自分の手の内から居なくなる。
そう思うと無性に、胸がざわついた。それを誤魔化すように下げた視線の先で、自分を見上げている澄んだ碧の瞳とかち合い思わず肩が跳ねる。
いつの間に目覚めたのか不思議そうに見上げてくる視線に縫い止められたようにカリムは目を離せず、何気なく伸ばした右手の人差し指でそっとそのふっくらとした頬に触れた。
すると小さくやわらかな手がその指を掴んで
「……ぁー…」
花が咲くように赤ん坊は笑った。
それを見た瞬間カリムの体の内を何か熱い衝動のようなものが駆け抜けて、次の瞬間にはもう言葉が口をついていた。
「この子は、私が育てます!」
その声は広い謁見の間の中では思いの外響き、父王とバーディニアの視線が弾かれたようにカリムを捉えた。