LUTIM
その後、兎に角赤ん坊を温めなくてはと自室に駆け込みベッドの上の掛け布を手繰り寄せて小さな体を包んでいたカリムの元にバーディニアがやってきたのは、割とすぐだった。
どうやらあの兵士が頑張って城内を走ってくれたらしい。
冷え切ってしまっていた赤ん坊はすぐにバーディニアの処置を受けて、なんとか一命を取り留めたのだ。
「ワーキャット族の仔だと…?」
静かに発された父王の声に、回想に思考を奪われていたカリムはハッとして顔を上げた。
一瞬自分がどこに居たのかを認識出来ずにそっと辺りを見回して、そこが謁見の間であることを確認した。
壁にはたっぷりとした厚みの紅い布が飾られ、天井には髪の長い天使の姿が左右に二人ずつ彫り描かれている。
観音開きの扉から始まる赤い絨毯は真っ直ぐと伸びて数段の段差が作られた上に在る玉座まで届いており、背後の壁には殊更豪華に紅の布が掛けられ、玉座の真上に当たる位置には色とりどりの硝子がはめ込まれたステンドグラスが飾られている、城内でも殊更豪奢な造りの場だ。
しかし今は玉座には誰の姿もなく、そこに座すべき父王は段差を降りてカリムたちの前に立ち話をしていた。
「はい。先程確認致しました。間違いありません」
「そうか…ワーキャット族の仔か…。………ワーキャット族は国を失ってまだ近かったな」
父が確認するように呟いた言葉にカリムは小さく息を呑む。
そのことはカリムも記憶していたからだ。
どうやらあの兵士が頑張って城内を走ってくれたらしい。
冷え切ってしまっていた赤ん坊はすぐにバーディニアの処置を受けて、なんとか一命を取り留めたのだ。
「ワーキャット族の仔だと…?」
静かに発された父王の声に、回想に思考を奪われていたカリムはハッとして顔を上げた。
一瞬自分がどこに居たのかを認識出来ずにそっと辺りを見回して、そこが謁見の間であることを確認した。
壁にはたっぷりとした厚みの紅い布が飾られ、天井には髪の長い天使の姿が左右に二人ずつ彫り描かれている。
観音開きの扉から始まる赤い絨毯は真っ直ぐと伸びて数段の段差が作られた上に在る玉座まで届いており、背後の壁には殊更豪華に紅の布が掛けられ、玉座の真上に当たる位置には色とりどりの硝子がはめ込まれたステンドグラスが飾られている、城内でも殊更豪奢な造りの場だ。
しかし今は玉座には誰の姿もなく、そこに座すべき父王は段差を降りてカリムたちの前に立ち話をしていた。
「はい。先程確認致しました。間違いありません」
「そうか…ワーキャット族の仔か…。………ワーキャット族は国を失ってまだ近かったな」
父が確認するように呟いた言葉にカリムは小さく息を呑む。
そのことはカリムも記憶していたからだ。