かさぶたと絆創膏
「俺ん家にハサミとかあるから!」
早く早くって急かす青は、ホントに子どもみたいで……ちょっと羨ましい。
こんな風にありのままで居られたら……。
自分には出来ない生き方に、知らず知らずのうちに憧れを抱いていた自分が居た。
「わかったよ」
床に置いてたボストンバッグを持ち上げ、裾を引っ張る青の歩調に合わせる。
「秋、どっか行くのか? あっ、彼女のとこ?」
嬉しそうに笑いかけてくる純真な顔。
家出してきた、なんて言ったら驚くんだろうな。
「彼女なら別れたよ」
顔色も変えずにポツリと呟けば、ますます不思議そうに俺を見上げてる。
彼女と付き合ったのは1カ月。
誠実そうに見える俺にしては短く見えるんだろう。
よく言われるから慣れている。
だから、勝手なイメージにいちいち訂正をする気はない。
「じゃあ、なんで?」
悪びれた様子も見せないで、睫の長い垂れ目を俺に向けた。
きっと青の目には、表面上の俺しか見えてないんだろう。
ちょっと足りない青のデリカシーが、また俺に苛立ちを与えた。