かさぶたと絆創膏
今頃彼は、わたしのお泊まりしてるって噂を先輩から聞いてるのカナ?
そんな嘘ついたって何にもならないのに。
だって彼の瞳には、わたしなんて映ってないんだから。
寧ろ自分の心が虚しくなるばっかりだ。
「ぁ……」
膝がじんわりと濡れてくる。
また涙がぶり返してきたらしい。
こんなに虚しくなるんなら、あんな嘘つかなければ良かった……。
自己嫌悪に拍車がかかって、涙が次々込み上げ始める。
ツーンと痺れた鼻の奥が痛くて顔を上げれば、
「……あっ」
「…………」
わたしの隣には、訝しそうにこちらを見下ろす男の人が居た。
彼の手には見覚えのあるキーホルダーの付いた鍵があって、
「…………あの」
指の先で涙を払い、その場に立ち上がる。
背の高いその人は、少しだけ目線の近付いたわたしを見つめた後、
「青の妹?」
こう言って小さく首を傾げた。
お兄ちゃんの名前が出たことに安心した反面、初対面の人に泣き顔を見られた恥ずかしさが急激に込み上げた。