かさぶたと絆創膏

どういうこと?


そう尋ねようと口を開くより早く、


「彼女が熱出したんだよ! 今看病してるから落ち着いたら帰るって秋にも言っといて!」


まくし立てるように一方的に言い切って、そのまんま通話終了。

通話時間20秒の表示だけが虚しく画面に浮かんでいた。



今の会話でわかったのは、


「青から?」


湯気の立ち上るマグカップを差し出してくれた彼の名前が、秋さんだっていうことだけ……。


「……彼女の具合が落ち着いたら帰るって秋さんに伝えてって」


「はは。困った奴だな」


カップ越しに秋さんの苦笑いが見えて、思わず深々と頷いた。


とりあえずの救いなのは、秋さんが良い人そうなこと。


入れてくれたミルクティのほんのりした甘味に、目の前の穏やかな表情が重なる。


「名前は?」


「……雪です」


「お腹空いてない? 何か作ろうか?」


相変わらず笑みを湛えた秋さんからの問い掛けに、バイトあがりでペコペコの胃をミルクティで宥めながら首を振ってみせた。


さすがにお兄ちゃんの友達でも初対面の人に、しかも男の人に作って貰うのは恥ずかしいよ。
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