かさぶたと絆創膏

「あの……手伝います」



秋さんの鮮やかな手つきにおこがましいと思いながら、こう言ってしまうのは女の子の性だと思う。


言ってから数秒間で後悔して、軽い自己嫌悪に陥った。



「あっ……下手に出だししない方が良いですよね」


手伝いを申し出といて一人撃沈。

空笑いだけがキッチンに響いてて、テンパって恥ずかしくて泣きたくなった。


……秋さんが唖然とわたしを見ている気がして、ますます顔が上げられない。


「はは。青の妹の癖に気遣いだな。青なんてつまみ食いはするけど手伝いなんてしたことないよ」


「……すみません」


人参の皮を剥きながら秋さんが楽しげに笑う。


悪気は無いんだろうけど……我が兄ながら恥ずかしいやなさけないやらで、頬の赤みが三割増しになった。


「ううん」


否定するように呟いた声が優しく、でも横顔はどこか憂いを帯びている気がした。


< 17 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop