かさぶたと絆創膏
「……醜いんですか?」
綺麗に食べ終えたオムライスの皿を手に取り、立ち上がろうとしたのを雪の声が止めた。
軽く持ち上げた皿の向こうで、華やかな青よりも内気な顔立ちの雪が躊躇いがちに俺の瞳を覗いてる。
「だって俺はキミの兄貴を……」
「驚いてます。ホントは。……でも、納得もしています」
青とは対照的なしっかりとした口調で吐いた言葉は、何故か青に似た真っ直ぐさを秘めていた。
思わず訝しんで眉を顰めていた。
「オムライスの人参がすごく細かくて、鶏肉の皮まで取って……秋さんは几帳面な人。だからお兄ちゃんが懐いてるんだって思いました。でも違う」
「違う?」
「お兄ちゃんが人参と鶏肉の皮が嫌いだから。……だったんですね」
青の為に。
青に喜んで貰いたくて身につけた俺の癖。
どうせ報われないのに。
ただ喜んでくれる一瞬が見たくて……。
穏やかに保ち続けた表情が、一瞬で剥がれ落ちた瞬間だった。
「醜いワケないです……こんなに暖かいのに」
薄く笑いかけてくる雪に、言い知れない感情に押されて涙が溢れそうになった。