かさぶたと絆創膏

「でも……あんな手のかかるお兄ちゃん、どこが好きなんですか？」


予想を大きく反して雪は、俺の前で初めて自然な笑顔と声を上げる。



「子どもっぽいし、頼りないし……」


やれやれと小さく肩を竦めた顔と裏腹に、その瞳は俺の答えを待っていた。


子どもっぽくて無邪気なところ。
頼りなくて俺に縋ってくる人懐っこさ。



「全てを笑顔で包み込む懐のデカさ」



俺が怖くて吐き出せなかった負の感情も、青は笑顔で簡単に受け止めてしまった。



「鈍感でバカだから……」


呆れたように溜め息をついた雪に、思わず笑みが零れる。


だって、その顔はどこか……嬉しそうだったから。



そして、


「似た者兄妹だよ」



俺の負の感情を笑顔で受け入れてしまう、そんな優しく温かな懐の持ち主は……どうやら無自覚で俺の前に現れるらしい。


醜いと思い続けていた邪な恋心に、否定と暖かさを与えてくれ……救ってくれた。



「わたし……鈍感でバカ、ですか？」



渋い表情で恨めしげにこちらを見上げる瞳に、何も言わずにただ微笑みを返した。