かさぶたと絆創膏
side秋
食器を片付け終えて戻ると、涙を拭うために渡したタオルを握り締めたまま雪は眠っていた。
その顔がどこかすっきりしたように見えるのは、内に秘め続けた気持ちを吐き出せたからだろう。
なんて……自分勝手な自己満足。
でもそう思いたかった。
自分が抱いた邪な恋心が雪に救われたように、俺も雪の報われなかった恋心を楽にしてやれたって……。
硬いフローリングの床から、頭を膝の上に解放させてやる。
泣きながら眠るとまぶたが腫れるって……昔に付き合った女が騒いでたな。
青に似た細く柔らかい髪に触れながら、そんなことを思い出していた。
ホントは青と騒がしく済ませてしまうつもりでいた最後の夜。
肝心な青が居ないのに、不思議と気持ちは穏やかだ。
撫で心地の良い髪に触れながら閉じたまぶたの裏に、この部屋で見てきた青の笑顔がいつまでも離れなかった。
やっぱり俺は、青の笑顔が一番好きみたいだ……。