かさぶたと絆創膏
*かさぶたと絆創膏*
side雪
「何考えてた?」
数年ぶりに一緒に過ごす夜。
傍らでわたしを見つめる彼は、あの頃より更に大人っぽくなっていた。
第一声でそう告げたら、
「そりゃあ大人だからね、もう」
小さく笑った顔がわたしを子ども扱いしている。
それがあの時と変わらなくて、少しムッとした自分の成長の無さが恥ずかしかった。
自己嫌悪に陥った三秒後。
「雪も綺麗になったね」
変わらずに健在だった穏やかな笑みに、簡単に捕らわれてしまった自分が居た。
「……初めて会ったときのことです」
懐かしくもほろ苦い失恋の感情が、にわかに思い出される。
……彼、今頃どうしてるだろう。
「人の腕枕の中で他の男のこと考えるのはひどいんじゃない?」
「えっ! ……だって秋さんが誘導尋問するから……」
また自己嫌悪に陥って背中を向けたわたしに、青の妹の癖にすぐ落ち込むって囁きが聞こえた。
「あっ! 秋さんだってまたお兄ちゃんの名前」
「……ほら、こっち向いた」
そしてまた、誘導尋問に引っ掛かって……秋さんの腕に捕まってしまう。
秋さんの温度は、あの頃と変わらず優しいままだった……。