かさぶたと絆創膏
*青の受難(オマケ)*
「お兄ちゃんに会って欲しい人が居るんだけど」
そう言って青の元に妹の雪から電話があったのが先週のこと。
久々にあった連絡がこれとは、兄心はなかなかに複雑だった。
子どもっぽい兄にしっかり者の妹。
珍しく両親不在の折に自分を頼ってきたにも関わらず、当時の付き合っていた彼女の看病で結局ほったらかしに。
助けて貰ったコトすらあれど、兄らしいコトをした記憶は皆無。
そんな情けない兄なりに、雪への愛情だけはいっぱしだった。
「わたしも一緒に雪ちゃんの婚約者に会うの?」
こう言って青の妻、虹(なな)は訝しげに眉をしかめた。
虹との初めての結婚記念日を祝ったのが数週間前。
雪をほったらかして行った看病の賜物だ。
「彼も会いたがってるから是非って! ……彼か」
目の前でうなだれる旦那に、虹は呆れ顔で鬱陶しそうに溜め息を漏らした。
「超変な奴だったらどうしよ! 目を覚ませ雪!って俺が愛の鉄槌を下すしかないかぁぁ」
「……心配しなくてもアンタより変な奴なんてそうそう居ないわよ」
一人まだ見ぬ敵に熱くなる青を置いて、虹はスーツを用意すべく立ち上がって行ってしまった。