かさぶたと絆創膏
……これからどうしよう。
預金通帳とボストンバッグ片手に家を出て一日。
途方に暮れてんのを微塵も見せず、大学の喫煙所でタバコをふかせていた。
ぷかぷかと気楽にのぼっていく煙を眺めていた俺の元に、
「秋ー!!」
馬鹿でかい声で呼びながら駆け寄って来た奴。
一限目の半ばで人気が無くて良かった。
じゃないと無駄に目立ってしょうがない。
「……おはよ。青(あおい)」
タバコを消して立ち上がったと同時に、青の華奢な体が腰元に飛びついてきた。
青は同じゼミで仲の良いグループの一人で、スキンシップの多い子どもみたいな奴だ。
グループ内で頭一つ背の高い俺にやたら懐いてくる頭一つ小さい男。
「助けてよー秋ー」
珍しく目深に被ったキャップから見上げた目がちょっと潤んでて、思わず首を傾げた。
訝しんで見下ろす俺から回していた腕を放し、青はキョロキョロと周りを伺う。
散々騒いどいて今更……なんて呆れてる俺に気付くワケもない。
「昨日自分でご飯作ろうと思ったらフライパンが燃えたんだよー!」