かさぶたと絆創膏
言うなりキャップを取った青の前髪が、
「ぷっ……」
眉毛より更に上で切りそろえられている。
昨日までは左の耳元まで流すくらい長かったのに、まるで家で母親に髪を切られた幼稚園児みたいだ……。
思わず吹き出しそうになった口元を右手で覆って隠すけど、
「あー! 笑うなよ秋ー!」
一歩遅かったらしく、キャップを被り直した青が喚き始める。
茶髪のコケシみたいな青が脳内にインプットされて……しばらく思い出して笑えそうだ。
「悪い悪い。……火傷はしなかったか?」
「うん……でも、恥ずかしくて美容院にも行けない」
しゅんとうなだれた青が、深い溜め息を零した。
こんなことで真剣に悩んでんだから気楽な奴だ。
……羨ましいくらい。
青に軽い苛立ちを覚える俺は、小さい人間だ。
そして苛立ちの矛先は自分に向いた。
「じゃあ、美容院に行けるくらいには整えてやるよ」
「ホントか! ありがとう秋!」
一瞬でも苛ついてしまった罪滅ぼしの提案に、青は嬉しそうに笑って服の裾を掴んだ。