そこにあるもの




あぁ…




アイツ…れおなからの手紙に、ただ、呆然とした。





まだ覚めていない頭をどうにかして働かせようとするが、今度は身体も動くことをやめてしまう。



その意味を、手紙の意味を理解しようと懸命に努めても、空虚感しか出てこなかった。




ゆっくりと手を伸ばし、先ほどまでいじっていた携帯を掴む。


指を動かしているうちに気づいた。




さっきの違和感はこれだったんだ…。





アドレス帳にも、履歴にも、彼女の名前は一つもなかった。




探すな、ということなのだろうか。



友人に聞けばすぐにわかるであろう連絡先も、今は聞く気になれなかった。




なぜって。

彼女のことだ。

全て変えてしまっているに違いない。




そんな彼女の性格を考えて、やっと少し笑えた自分がいた。







もう一度手紙を読み返す。



離れるには、全てを切るには短すぎる内容。





いや、十分かもしれないかもしれないけど

俺には全く足りないものに感じた。







彼女は…



彼女はそのつもりで昨日やってきたのだろうか。


だから、呼んでもなかなか来ないこの場所へ、自ら足を運んだのだろうか。



最初から、この日が別れと決めていたのだろうか。




昨日―――俺の誕生日に……











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