‡G†O†D†s‡〜討魔の一刀〜
「大したものだ!

おかげで着物に少し焦げが出来たわ!

ここ二、三百年で、着物とは言え俺に一撃入れた人間は貴様が初めてだ!」




 少年は、素直に感心しているようだ。




 甚兵衛の首筋に当てられた刃は、まるでそれ自体が魔力を持っているかのように、甚兵衛に身動きをとらせない。




 死の覚悟とは、無駄死にをする無謀さのことではない。




 無謀な決断は出来ない。




 少年の意図が読めず、甚兵衛は決断出来ずにいたのだ。




「で、どうする?」




 少年が静かに問い掛けてくる。




「どうする、とは?」




 甚兵衛には、問い返すことしか出来ない。




「だから、まだ続けるか?」




 少年の口調は、まるで弟子に対するようだった。




(そういえば、師匠と呼ばれていたんでしたっけね)




 甚兵衛が、ふと断十郎から聞いたことを思い出した。




「私を殺す気は無いんですか?」




 少年が、笑い出す。




「貴様を殺したところで、俺に得は無いわ!

生かしておけば、何かに使えるかも知れんが・・・・・・」




 少年が何かを思案するように言った。
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