‡G†O†D†s‡〜討魔の一刀〜
 平治は怯んだ。




 元々たいした覚悟は無いのだ。




 一歩後退りしかけたところで、家人の一人に目が留まった。




 少女だった。




 まだ幼い少女が、怯えた眼差しをこちらに向けていた。




 住み込みで奉公しているようだ。




 平治は、嗚呼そういえばそんな話をどっかで聞いたな、と思い出した。




 少女は、平治の顔見知りだった。




 もっとも、少女のほうは平治に気付いてはいまい。




 平治は顔を黒い覆面で隠していたから。




 かよ、という名前の少女だった。




 父親を平治達のばら撒いた病で失い、母親もその病で失った。




 かよの母、おせんは、愛娘が病に罹らないようにと、奉公に出すと言っていた。




 それが、ここだったとは・・・・・・。




 かよは、平治の罪の現実だった。




 平治がどんなに意識しないようにしても、事実から目を背けようとしても、平治が、かよのような存在を、数多、生み出しているのは揺るぎない現実だった。
< 341 / 445 >

この作品をシェア

pagetop