‡G†O†D†s‡〜討魔の一刀〜



 今夜の花鵠城下は、皆が何かを恐れているかのように静まり返っている。




 件の強盗を模倣した輩でさえ、ナリを潜めていた。




 と言うより、不思議な程、人の気配がしないのだ。




 甚兵衛はそのことに、次第に、嫌な予感を覚え始めた。




 甚兵衛が二人に、警戒を促そうとしたところで、先頭を走っていた断十郎が、不意に足を止めた。




 そのすぐ後ろを走っていた凪は、断十郎の様子を訝った。




 断十郎は、前方の闇を凝視している。




 凪は、何があるんだろう、と身を乗り出して見ようとした。




 しかし、それを、無言で断十郎が押し止める。




 断十郎は、相変わらず、険しい表情で眼前の闇を睨んでいた。




 もう一度、凪が闇を見る。




 すると、その中から滲み出るようにして、人が現れた。




 どうやら町人のようだった。
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