‡G†O†D†s‡〜討魔の一刀〜
 愉快そうに笑いながら、気楽な調子で甚兵衛に声が掛かった。




「相変わらず、愉快そうなことをしているな!

甚兵衛とやら」




 三人が、ハッとしてそちらに視線を送る。




 建物の陰に、人影が二つあった。




 背の低いほうが発した声だ。




 その人物が、月明かりの中に姿を現す。




「彝経九郎!?」




 妖達の動きが止まる。




 闖入者の登場に戸惑っているかのようだ。




 もっともそれは甚兵衛も断十郎も同じで、彝経九郎の意図が読めない。




 彝経九郎は尋常ではない覇気を放っている。




 迂闊な行動は、彝経九郎相手には危険極まりなかった。




 警戒するように彝経九郎を見る。




「何をしにここへ来たんです?」




 警戒心をあらわにする甚兵衛達を、彝経九郎はからかうように笑った。




「そんなに警戒せずともよかろうが。

なに、ちょいと夜風に当たりたいと思って散歩していただけだ」




「こんな夜更けに?」




 自分の冗談に、生真面目に応じる甚兵衛を見て、彝経九郎が苦笑を浮かべた。
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