‡G†O†D†s‡〜討魔の一刀〜
 ミシミシと、頭蓋から音が聞こえてきた。




 平治の頭から、角が生えはじめていたのだ。




 上顎からも、下顎からも、犬歯が肉食獣よりも鋭く長く伸びている。




 メキメキと骨が軋むような音をたてながら、筋肉が盛り上がっていく。




 平治のその姿は、まさしく、鬼のように変貌していった。




 だがその時、切羽詰まった調子で、平治を諭す声があった。




 断十郎だ。




 断十郎が駆け付けて来たのだ。




「馬鹿野郎!

平治!

おめぇはまだそこまで堕ちちゃいねえっ!

とっつぁんの声に、よく耳を傾けてみろ!」




 そこには断十郎が、息を切らしながら、平治を見ていた。




 その断十郎の声が、僅かに残っていた平治の心に届く。




 平治は、断十郎の声に促され、反射的に平吾を見た。




 平吾が、今にも消えてしまいそうな程、小さな声で何かを呟いていた。




 平吾は平治をじっと見詰めている。




 つまり、その呟きは、平治に対してのものなのだ。
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