‡G†O†D†s‡〜討魔の一刀〜
 甚兵衛の記憶の中で、断十郎の声がする。




 それは、甚兵衛が断十郎と出会ってすぐの頃だ。




 当時、甚兵衛は、まだ少年と言ってよい年齢だったが、盗賊だった。




 忍の里を逐われた甚兵衛には、そうするしか生きる術が無かったのだ。




 世の中に絶望し、荒みきっていた甚兵衛は、他人を傷付け、他人の物を奪った。




 まるで、餓狼のような生活をしていた。




 そんなことをしていれば当然、為政者から目を付けられる。




 そんな折、断十郎に出会ったのだ。




 むろん、荒んでいた甚兵衛が、すんなり断十郎を受け入れることなど出来たはずもない。




 しかし断十郎は、今と変わらず人がよかった。




 そんな断十郎と接するうちに、甚兵衛の中の荒んだ邪心は、涙とともに甚兵衛の中から流れ出ていったのだ。




『俺にはお前ぇの力が必要なんだ・・・・・・。

俺に力を貸してくんねえか?』




 取り立てて、奇を照らったわけでもないその言葉は、だがしかし・・・・・・、いや、だからこそ、甚兵衛に染み込んでいった。




 なぜだろう?




 貴方はなぜ、そんなにも私を信じてくれるのだ?




 甚兵衛にとってそれは大いなる疑問であったが、それでも、心は誇らしさで満たされ、奥深い所から力が込み上げてきた!




「断十郎の旦那・・・・・・。

暫くの間、凪をよろしく頼みます!」




 甚兵衛は、己に集中するべく目を閉じた。
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