‡G†O†D†s‡〜討魔の一刀〜



 半壊した《大木屋》を、じっと窺う二人の女が居た。




 鏘緋と花鶏だ。




 やがて鏘緋が口を開く。




「さて・・・・・・。

これは何やら、面白いことになってきたわね」




 そう言って、妖艶な笑みを浮かべる。




「彝経九郎に、あの経輝という男・・・・・・。

そして、甚兵衛と言ったかしら?

それに・・・・・・。

あの刀・・・・・・。

玄讖坊様にご報告せねば」




 鏘緋が、花鶏のほうを見る。




「ご苦労様。

花鶏。

また近いうちに、貴女の異能を借りることになるでしょう」




 鏘緋の視線と口調には、皮肉が込められていたが、花鶏は表情を完璧に消して、それを無視した。




 しかし鏘緋は、愉快そうに、そんな花鶏を見る。




 そして、いきなり、花鶏の頬に舌を這わせた。




 花鶏がサッと顔を背け、鏘緋を睨む。




 そんな花鶏の様子さえ、鏘緋には可笑しいらしい。




 クスクスと笑う。




「近いうちに、また来るわ」




 鏘緋はそう言い残し、急速に白んでいく空を避けるように、まだ蟠(ワダカマ)っている闇の中に溶け込むようにしてその姿を消した。




 あとに残された花鶏が、無残な状態の塀と、その隙間から見える断十郎や甚兵衛達を見た。




 とりあえずのところ、鏘緋や、その背後に居る者達の企みは阻止されたことになる。




 花鶏は、どこかホッとしたような表情を見せた後、そっとその場をあとにした。
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