僕が君を好きになった理由
そんな僕の
願いも虚しく
終始淡々としながら
中澤は僕に言った。

「実はウチの猫が逃げちゃって…。普段は家から出ないのに、今日はお母さんが、玄関のドアを開けた瞬間に出て行ったから困っているの。小嶋君、猫探し得意なんでしょ?一緒に探してくれないかな?」

何?それ?

僕、猫探し得意?

記憶を手繰り寄せる…。

そういえば
小学6年の時
近所の前園さんの
家の猫が、3匹揃って
家出した時に、僕が
全部、見つけてきたっけ?

そんな話
まだ生きてるの?

おばちゃんネットワークの
怖さを僕は、その時知った。

中澤は僕を見つめ

「お願い、チョコを探して」

と、潤んだ目で言う。

これを拒否できるほど
僕はまだ、人間が出来てない。

出会って7年目にして
舞い降りてきた奇跡…
僕は中澤の愛猫である
「チョコちゃん」の
おかげで中澤と共に
街を歩く大義名分を
手に入れた!

僕と中澤の会話を
物欲しそうに見ていた
僕の同級生達に

「悪い!
ちょっと行ってくるわ!」

と、優越感に浸りながら
言い残し、僕は中澤と
ゲームセンターを出た。
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