風の旅
「な、瑞姫のこと、話すのは、怖い?」

なんだか怖がることの方が多かったから、いままでわざと聞かずにいたそのことを、思いきって聞いてみた。

ベッドで枕もとのライトだけ付けてほの暗い中。

その話題に触れるなり、肩がぴくり、と不安げに揺れた。

『やっぱり、気になるよね』

返事の代わりに、額にキスを落とす。

今までと同じ、あまりにもつらそうな表情をしたから、やはり聞くのをやめようか、と思ってしまった。

けど、このままじゃ一緒にいることすら危うくなるから、勇気を出すことにする。

「瑞姫とずっと一緒にいたいから。」

少しだけ微笑みを返してくれたけど、やっぱり不安そうな表情は変わらない。

『お願い。明日、ちゃんと話すから。今は。』

長い沈黙の後にやっと書いたそれを俺に見せると、痛いくらいにしがみついてきた。

これだけ嫌がるって、どんな風に生きてきたんだろう・・・。

「わかったよ・・・。」

想像もつかない瑞姫の人生を創造しながら、

返事の代わりに、今度はきつくきつく、抱きしめて、眠りに落ちた。





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