風の旅
噴水から延びていたのは、瑞姫の長い髪だった。

幸い、噴水の池が浅かったおかげで溺れてはおらず、体が冷え切っていただけだった。

たぶん、俺が気がつかなかっただけで、結構長い間、あそこにいたのだろう。

すぐに家に連れ帰って、風呂に湯を張り、瑞姫をいれて、温める。

息は弱弱しかったけれどしっかりしているから、大丈夫なはずだけど。

湯船の中で、冷え切った瑞姫を抱きしめながら、考える。

瑞姫は、何を思ってあんな所にいたんだろう。

あんな、寒くて、冷たくて、さみしいところに。

瑞姫はさみしがり屋だと思う。

俺が家を出るときは、ものすごく不安な顔をしていて、帰ってくると言葉にはしないものの、さみしかったということを体全体を使って俺に訴えてくる。

なのに、なんで。

死ぬつもり、だったんだろうか。

・・・もしかして、最初も、死ぬつもりであんな所にいたんだろうか。

でも、どんな理由にせよ。

「・・・ごめん、瑞姫・・・。」

瑞姫を抱く腕に力を込める。





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