風の旅

荒れた凪

『うちは資産家で、私はその跡取りの父の本妻の子。

 父と母は政略結婚で、愛とか、無縁だった。

 そんな、跡取りが欲しいだけで作った子供が、耳が聞こえない、しゃべれない私。

 父はひどく怒り狂って、母や私に対して暴力を振るうようになって、母は私のことをか ばいながら父の暴力に耐えてた。
 
 けど、私のことを誰よりも可愛がってくれた母は、無理がたたって、6歳の時、亡くな った。

 母の後ろ盾がなくなった私に親戚中否定的で、母の実家も引き取ることを拒否して。

 私は家の敷地内の隅にある、小さな離れに移された。

 生活に必要なものが一通りそろった牢獄のようなそこで、私は一人暮らしを強いられた の。

 昔の私は、いつか父が迎えに来てくれるって、淡い願いを抱いていて・・・。

 耐えきれなくなってこっそり本宅にいってみると、そこには知らない女の人と、知らな い男の子がいたの。

 正確に言うと父の愛人と、私の異母兄で・・・父は本妻がいながら外に愛人を作って、 その愛人に子供まで産ませていたの。

 しかも、私よりも年上なの、笑っちゃうわよね。

 それから、一人だけ、私付きのお手伝いさんみたいなものをつけてれくれたけど、それ 以外は食糧と最低限のものだけしかもらえなかった。』






*
< 18 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop