風の旅







『梗丙が、私を見つけてくれた日、ね。

 いつものように私をいじめるために訪ねてきた彼に・・・襲われかけたの。

 その時、お手伝いさんもいなくて・・・怖くて怖くてしょうがなくて、離れにいるのも 怖くて、ぎりぎり、逃げ出したの。

 必死で、何を持つこともなく、靴を履くことすら、忘れて。

 とりあえず土砂降りの雨の中を走っていたら、あの公園にたどりついたの。

 公園には誰もいなくて、余計になんだか怖くて、噴水のところに行ったとき、もう、あ んな離れに閉じ込められて生活するくらいなら、このままここで死んだ方が、私幸せな んじゃないかと思って。

 あのまま土砂降りの雨の中にいれば、そのまま死んじゃえるんじゃないかって思って、 ずぶぬれのまま、あそこにいたの。』




瑞姫を、見つけられてよかったなぁって思った。

瑞姫は、愛情を十分にもらえなかった、女の子。

一人はさびしかっただろうし、男に襲われるなんて怖かっただろうし。

死にたくも、なるだろうし、話したくなくても、当然。

そんな気持ちのまま瑞姫を死なせなくて、よかった。

やっと、過去を話すことに脅えていた瑞姫の気持ちがわかった。






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