風の旅

人命救助

今は6月だというのに、暖房をガンガンに使い、けれど俺にとってはそれが暑くて暑くて、タンクトップという矛盾した格好をとっている。

それはもちろん、さっき連れ帰った女性のためで。

今はベッドに寝かせてあるけど。

まず噴水に落ちていたから風呂に入れて(あそこの噴水は、1か月に1回は掃除の業者がくるみたいだけど、そんなの見たことない)

体温計で熱を計ってみると38度を超えていて、寒いのか、体の震えが止まらなくて、布団に毛布、さらに暖房まで用意したのだった。

風呂に入れたはいいけど、もちろん服はびしょぬれだったから、俺のTシャツを着せて(小柄な人でよかった・・・ワンピースになってくれた・・・)

腰まである長い髪を乾かすのに苦労して、男の一人暮らしにはない加湿機がわりにタオルを濡らしてきて干して、冷えぴたシートも同じくなかったのでハンドタオルを濡らして彼女の額に乗せて。

俺、福祉関係の仕事は向かねぇな、なんて思いながら、必死でいろいろやった。

そんな中・・・そう、見てしまいました。


彼女の裸。


や、そりゃ変なこと考える余裕もなかったけど、できるだけ見ないようにはしたけど、何も考えずにそういうことをできるほど、まだ人間ができてねんだよ!

据え膳とか、空気の読めないことは考えなかったけど!

でも、やせ細って見えたのに、意外としっかりしててびっくり・・・。

「・・・。」

こんな男くさい妄想をこんな状況でしている自分が嫌になって頭をぶんぶん振って、何かしてさっきのことを忘れようと時計を見やる。

現在午後7時過ぎなり。

なんだか濃い経験をしたせいか、もっと時間がたっていると思っていたのに、俺の中の時間感覚は、あまりに狂っていた。

起きたら何か食べないと、薬も何も飲めないよな・・・。

自分の腹が減ったのもあって、自分にはチャーハンを、彼女にはおじやを作ろうと台所に立った。




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