風の旅
Ⅱ
優しい時間
瑞姫を救出してから1か月がたった。
世間は夏真っ盛り、大学は夏休みに入ったばかり、どこに遊びに行くとか、いつ何をするとか、そんな声ばかりが聞こえる賑やかな季節。
去年の夏まではそんな風に過ごしていたけど、今年の夏は少し違う過ごし方をしてみることにした。
「瑞姫―?ただいまー。」
俺がバイトから帰ると、聞こえないはずなのにどうやって瑞姫は悟るのか、リビングから出てきて出迎えてくれるのが日課になっていた。
『おかえりなさい!』
瑞姫は必ず笑顔で、筆談で出迎えてくれる。
「ただいま」
そんな瑞姫に俺は大げさなしぐさで告げる。
俺の唇の動きで何を言っているか理解する、という瑞姫のために、口を大きく動かして話すことが癖になった。
俺がそれすら楽しんでいることを、瑞姫は知ってるのかな。
『今日は冷製パスタだよー!』
書いて押し付けるやいなや、すぐにキッチンへ走って行って準備をしてくれる。
俺が荷物を置いて着替えて戻ってくる頃には、テーブルに完璧な食事が出来上がっていた。
「ありがとう」
そして、瑞姫の笑顔を見ながら一緒に食事をする。
そんな日々が、すでに日常になっていた。
*
世間は夏真っ盛り、大学は夏休みに入ったばかり、どこに遊びに行くとか、いつ何をするとか、そんな声ばかりが聞こえる賑やかな季節。
去年の夏まではそんな風に過ごしていたけど、今年の夏は少し違う過ごし方をしてみることにした。
「瑞姫―?ただいまー。」
俺がバイトから帰ると、聞こえないはずなのにどうやって瑞姫は悟るのか、リビングから出てきて出迎えてくれるのが日課になっていた。
『おかえりなさい!』
瑞姫は必ず笑顔で、筆談で出迎えてくれる。
「ただいま」
そんな瑞姫に俺は大げさなしぐさで告げる。
俺の唇の動きで何を言っているか理解する、という瑞姫のために、口を大きく動かして話すことが癖になった。
俺がそれすら楽しんでいることを、瑞姫は知ってるのかな。
『今日は冷製パスタだよー!』
書いて押し付けるやいなや、すぐにキッチンへ走って行って準備をしてくれる。
俺が荷物を置いて着替えて戻ってくる頃には、テーブルに完璧な食事が出来上がっていた。
「ありがとう」
そして、瑞姫の笑顔を見ながら一緒に食事をする。
そんな日々が、すでに日常になっていた。
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