磁石
夏の空の下
「暑―――――――ッ!!」


暑い。


本当に暑い。


まだ七月に入ったばかりだというのに、蝉は声を枯らして鳴いている。


夏の太陽に妬かれ、ジリジリとしたアスファルトの上。

二人の少女が楽しそうに自転車を走らせていた。




ロングヘアーをふたつに結んだ子は、恩田菜実。

くりくりとした目が印象的だ。菜実の日焼けした肌に、白いTシャツがとてもよく似合う。



ショートカットの子は、伊川真友湖。

菜実と目が合うたびに、真友湖はクシャッとした笑顔になる。

真友湖は、面白くてかわいい菜実が大好きだ。決して口には出さないけれど。


「あハハハはははハハハは――――ッ楽しかったね―――――――。」


真友湖は、無邪気に言った。


もうちょっとで、セブンにつく!!!セブンはクーラ-利いているし、アイス買うから寄りたいなぁ…。


そう思うと自然と自転車のペダルに力がはいった。


「つうかウチらスゴ…!!ここから隣町って相当はなれてるのに、チャリで行っちゃったぁぁぁぁ!!」


菜実も笑顔で言う。


さすがにチャリで行くのはきつかったけど、楽しかったぁ…。





そう言いながらも、そう思いながらも、菜実の頭の片隅には健がいる。




健も一緒だったら…



と。
< 1 / 6 >

この作品をシェア

pagetop