【短編】鐘の音が聞こえる
「…寒くない?」



「平気」



「そう…」



インディゴの夜の下、相変わらず白い息で手を温めながら、ベンチに座る私たち。



「…奈緒は、いつまでいるつもりなの。ここに。」



ケンが不意に口を開く。



「ケンが待ってる彼女が来るまで、ここにいてあげてもいいよ。」



私は笑ってそう言った。



「なんだよ、それ。単に寂しいだけなんでしょ? しょうがないなぁ。」



ケンも笑った。



私たちはお互いの目を見て、笑い合った。



…そんな空気も悪くない。



心が暖かくなる。



彼は、不思議な少年だった。









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